舞台設定・Ⅰ


ノイシュタイン



 物語の中盤までの舞台となるノイシュタインは海沿いの田舎町です。
 坂の町でもあります。
 町外れの山の中腹にノイシュタイン城があり、そこから坂道を下っていくと道の両側に店が並ぶ通りに出ます。
 そのまま下ると左側に駅舎、商店街から脇道に逸れると海(堤防)へ続きます。

 堤防の下は岩場です。これは昔このあたりに火山があった名残だと言われています。
 潮が引けば人が通れるような穴も見つかるような岩で、そのため取り残された小魚や蟹を取る子供の姿も見ることができます。
 砂浜は無いので海水浴には向きません。その場合は隣町まで行くことになります。


 商店は八百屋、小間物屋、魚屋など生活必需品を売る店が主で宿屋は1軒です(万が一、満室の時は食堂などの他の店で寝泊まりすることもできますが、あくまで救済措置のため歓迎はされません)。
 そのせいか、魔王討伐に来る者は近くの森で野営するか近隣の町に泊まることのほうが多く、宿泊需要に結びつかないので新たな宿屋が増えない、という悪循環になっています。
 ラスボスのお膝元ということで武器屋と防具屋も存在します。田舎町とは思えない高レベルの武器・防具を扱っています。装備品を販売しているのはここが最後ということで買い直す者も多く、結構儲かっているようです。

 海の町なので魚料理を出す店も多いです。
 名物はエビ料理と言われていますが、これは食堂が個人的に情報紙で 謳《うた》っているにすぎません。


 駅舎は剥げかけた赤い屋根の平屋建て。夜には無人駅になります。
 入ってすぐの構内は天井が高く、クリスマスの時期はその高さを生かして大きめのツリーが飾られます。
 向かって左側に発券場と待合、正面奥が改札です。

 夜は線路側は改札を閉じるだけですが、駅員詰所と待合の窓と扉は施錠されます。硝子窓を閉じるだけではなく、その外から木製の扉で閉めるのは防犯上での措置です。
 構内の上のほうに明かりとり用のはめ込み式の窓があります。

 特急や急行はありません。
 電車や自動車もありません。この世界の主な交通機関は馬車と汽車です。
 駅前から近隣の(汽車の通っていない)町に向けて乗合馬車が運行されています。




 電気がないので灯りは蝋燭、または油を利用したランプが主体です。
 夕方になると街灯に1本1本灯りをつけて行く「街灯男」と呼ばれる者の姿が見られます(ノイシュタインに限らず)。ちなみに名称は「街灯男《・》」ですが、たまに女性もいます。


 町を治めている町長は現在5期目。6期目の選挙に出馬する気も満々です。
 特に悪政をしいているわけでもなく、他になりたい者も出てこないので、このままなら6期目も安泰のようです。
 町長の家は山側の町はずれ。庭先からノイシュタイン城が見える位置にあります。


ノイシュタイン城





 ノイシュタインにある山の中腹にある古城。
 そのあたり一帯を領地とする領主の居城でもあります。
 冒険者の間では魔王が住む「悪魔の城」として有名です。


 敷地全体を3m以上の鉄柵で囲まれていて、容易に侵入できない造りになっています。
 1組の勇者が城に入った時点で正門は閉ざされてしまうため、次のパーティが到着してしまった場合は前のパーティの決着がつくまで入ることができません。
 
 正門から正面玄関までの道には台座付きのガーゴイルの石像が並んでいます。
 勇者が来ている時はその像がなくなるため、それが勇者が来ているか否かの判断になります。
 但しこれは魔族から見た場合の変化で、人間である勇者の目の前で石像が消えたりすることはありません。
 ※勇者側からは、ガーゴイル不在時も、魔力で石像の幻影が並んでいるように見えています。
  その魔力が失われた時は、台座だけに見えるでしょうが。


 月1回、庭師が入って木の剪定をしています。
 裏庭には薔薇園があり、中央に小さな|四阿《あずまや》があります。
 薔薇園の先には物置小屋のような小さな小屋があります(作中表現なし:没ネタで登場)。
 さらに奥の庭木戸から裏山に入った先には桜の木があります(番外編・桜宴Ⅰ、Ⅱで登場)。


 正面玄関から中に入ると玄関ホール(3階部分まで吹き抜け)です。
 魔王と勇者が対峙する場所でもあります。
 本来ならラスボスがいる場所は城の最奥が定番なのですが、居城としての役割もあるので手前に設置されています。
 ホール中央には城2階部分へつながる階段があり、途中の踊り場の壁には石造りのレリーフが埋め込まれています。
 ※レリーフはその時の魔王の家の紋章が入ることが多く、今はメフィストフェレスの紋章(鳥が羽根を広げた形と称される)が入っています。


 階段は踊り場から左右に別れ、向かって左側の扉から先にテラス及び外廊下、その先の階段をさらに進んだ先に領主の執務室等の業務スペースがあります。
 右側の扉から先は客間などの普段使わない部屋が並び、そのかなり先が城住人の居住スペースです。
 業務スペース、居住スペース側にも連絡通路があるので、わざわざ玄関ホールまで戻らないとそれぞれの場所へ行けない、ということはありません。
 ※業務スペース、居住スペースと連絡通路でロの字型になっています。


 テラスは硝子扉で庭と隔てることができます。
 冬以外は硝子扉は取り除かれています。


 坂をそのまま利用して建てられているため、正面から見ると1階部分に見える玄関ホールは裏側居住区から見ると地下、テラス・外廊下のある2階部分が1階というわかりにくい構造をしています。
 作中では他に食堂、書庫、食料庫、配膳室などが出てきます。


ミバ村




 ルチナリスの故郷。
 山奥にある村。酪農(主に牛)が盛んです。
 10年前に悪魔による人間狩りに遭い、今は廃村になっています。
 

 学校はなく、教会で神父が読み書きを教えています。
 それ以上の勉強がしたければ(且つ財力があれば)麓の町まで降りなければなりません。


 湖とまでは言えない大きさの沼がありますが、何故か魚は獲れません。
 魚は行商人から買うことになります(漬魚・干物)。


 近くの森には狼や熊といった獣がいます。
 日中は村までは入って来ませんが、夜は家畜を狙って入って来ることもあります。


 山にある村ですが、雪はあまり降りません。
 ノイシュタインより緯度が南寄りだと思われます。


魔界本庁




 魔界を出入りする魔族を管理している役所で、魔界のはずれにあります。
(現代で言うところの)住民課、税務課などの窓口の他に、職業斡旋もしています。
 正式名称がとてつもなく長いので略称である「本庁」がそのまま定着している、ということになっていますが、噂によると『魔界より 出いで遠き地に生きし 同胞はらからの~云々』という妙に厨二病な名称が恥ずかしいからだとも言われています。印も「本庁」とだけ記されています。
 建物の最奥に祭壇と呼ばれる部屋を持ち、魔王就任儀式などはそこで執り行われます。
 儀式の見学は可能です。が、過剰な騒音や混乱を避けるため、日程は公表されていません。

 人間界に住んでいる魔族には、生死確認のため、ここから年に1度確認文書が送られてきます。これを送り返さないと死亡扱いとなり、爵位は勿論、魔界に残っている土地家屋などの財産も没収されてしまいます。