【2020/07】お題:橋


 

2020年7月のお題「橋」で書かせて頂きました。

スペース・改行・ルビを除く300字。

ジャンル:オリジナル(ちょっとホラー)

注意書き:今回は真面目に書いた! 真面目に書いたよ!!

 

【古来、橋とは行けない場所に行くためのもので。】



 彼女は橋のたもとで別れる。

 集落は橋のこちら側だけれども彼女の家だけは向こう側。だから遊び場はいつも川だった。
 ランドセルを道端に放り、雑草の坂をすべり下り、服のまま川に飛び込む。魚を追いかけ、丸い小石を拾っていると、しばらくして向こう岸に彼女のお婆さんがやって来る。誘われるままについて行き、|西瓜《スイカ》や|煎餅《せんべい》をきょうされ、縁側で|雑魚寝《ざこね》。あたりが夕焼け色に染まる頃、橋を渡り、ランドセルを背負せおい、家路につく。それが日常だった。


 その日も彼女とは橋のたもとで別れた。
 突如とつじょ暗転した空に「泊って行け」と言ってくれたお婆さんをさえぎり、僕らを追い返した彼女の気に何がさわったのか――。
 
 



 橋の向こうに家などないと、そう聞いたのは彼女が消えた後の話。