2020年6月のお題「鍵」で書かせて頂きました。
スペース・改行・ルビを除く300字。
ジャンル:オリジナル
「だって大事なものには鍵をかけるでしょ?」
女が俺に残したのは1本の鍵だけだった。
金の亡者だ魔女だと呼ばれた女の半生は、息子である俺の目を通しても一般的な金持ちレベルを通り越す豪遊っぷり。とすれば、この鍵が遺産の隠し場所と考えるべきだろう。
何処《どこ》だ?
居間。
寝室。
女がついぞ立ち入らなかった厨房まで調べたが、合う鍵穴はひとつもない。
外か?
しかし玄関扉はびくともしない。
とすると、まさかこれはこの家の……!?
『――大事なものには鍵をかけるでしょ?』
待て!
ここにきて”大事なのは息子の俺♡”なんてお涙路線じゃあるまいな。
その前にこの扉、内側からは鍵が操作できない仕組みなんだが、どうやって出ればいいんだ俺は!!