【2016/02】お題:光


 

 twitter300字ss様、2016年2月(第十八回)のお題

『光』で書かせて頂いたものです。

スペース除く300字。

ジャンル:オリジナル

 

【希望】

 

 

 その店は眩い光に溢れていた。

 

 僕がその店に足を踏み入れたのは、

電灯におびき寄せられる蛾と似たようなものだったのだろう。

 

 

 丸い 硝子玉の中で灯るのは 蝋燭だろうか。

 なんの気なしに僕はそのひとつを覗き込んだ。

 

 金色の炎だ、と思ったのも束の間、

それは顔を上げた。

 人の形をしたそれは、儚げな笑みを浮かべて僕に手を伸ばす。

 

「この子に気に入られてしまったね」

 

 職人といった風情の店主が笑いながら

その硝子玉を取り上げた。

 

 

 僕は首を振った。

 僕には必要ない。だって――。

 

 

 

 

「連れて行っておやり。“希望”を」

 

 

 

 

 そんなものがまだ残っているのだろうか。

 半ば押しつけられるように持たされた硝子玉の中で、

その子が微笑む。

 

 先程より少し明るい笑みで。