【2020/12】お題:眠る


 

2020年12月のお題「眠る」で書かせて頂きました。

スペース・改行を除く300字。

 

ジャンル:オリジナル

注意書き:なし

 

【眠り屋】



「その眠気、お売り下さい」

 眠り屋と名乗る男はそう言った。

 聞けば、眠気が来なくて困っている者――例えば、一向に寝てくれない子供を持つ母親などにその眠気を売るのだとか。
 売った側は眠気を忘れて作業に没頭できる、となればwin-win。
 僕は喜んで眠気を手放した。

 入稿期限まで後六時間。手つかずのページは十枚。
 十年も前に死別した祖母に再び死んでもらって無理やり休暇をもぎ取り、寝る間も惜しんで頑張ったけれども限界だ。
 でも! 眠気さえ来なければ!



 そして朝。
 僕は無事入稿を終えた。
 終わった。これで安心して眠れ……いや。
 脳も体も疲れを訴えているのに全く眠気が来ない。

 その時だった。


「眠気いかがですか? 一時間五千円です」