運に見放された人生だった。
　片想いの彼は友人に取られ、見合い相手は女を作って消え。
　就職先はブラックで終発帰りはあたりまえ。
　そんな日常から逃れるようにのめり込んだスマホゲームは、推おしのピックアップだと言うから９万入れて天井したのにすり抜けた。


　なのに更さらなる試練を与えようと言うのか。
　ゲーセンに推おしのぬいぬいぐるみが入荷したと聞き、性懲しょうこりもなくつぎ込み。
　只今３千円が溶けたところ。

　クレーン初心者の私に奇跡なんて起きるはずがなかった。
　またしても涙を呑のんで諦めるしかないのか――。

「……それ確率機だからあとちょっとですよ」
「えっ」


　私の『運』は諦めた少し先で待っていたのかもしれない。
　推おしを手に、家路を急ぐ私の足は軽かった。