【2020/05】お題:書く

 

2020年5月のお題「書く」で書かせて頂きました。

スペース・改行・ルビを除く300字。

ジャンル:オリジナル

注意書き:”書”の字が入っていればいい!(マテ)

 

「不備のある書類は受け付けられません」



 魔王は目を覚ました。

 薄れる記憶をひもとけば、最後に残るのは討《う》たれる|己《おのれ》の姿。

 そう、負けたのだ。
 目の前の勇者に。
 


 しかし何故《なぜ》。魔王は自問する。

 夢だったとでも言うのか?
 否《いや》。夢ではない。
 見渡す限りの瓦礫《がれき》の山は、あの日、城が崩壊した証拠。
 全てが崩れゆく中、満身創痍《まんしんそうい》の勇者は仲間に担《かつ》がれて立ち去った。
 私はそれを視界の隅に留《とど》めながら|瓦礫《がれき》に圧《お》し潰されたのだ。

 なのに何故《なぜ》勇者が此処《ここ》にいる?
 何故《なぜ》私は生きている?



 そんな魔王に、勇者は1枚の書類を差し出した。

「経費申請しようとした此処《ここ》まで来た証明が要るって言うんだよ経理が。ってことでハンコかサインをくれないか」


 ……馬鹿な。
 そんなことのために魔王を復活させたのかお前は――!