【2020/02】お題:包む


 

2020年2月のお題「包む」で書かせて頂きました。

スペース・改行・ルビを除く300字。

ジャンル:オリジナル

注意書き:またくだらぬものを書いてしまった。

 

STORIE様版があります。

 

【刑事ドラマ終了15分前的な。】

 

 

 男は追い詰められていた。

 海に迫《せ》り出た崖の上。サスペンスでよく見るその場所に男は立っている。刑事が男を包囲している。

 

「包《つつみ》! お前が抱えていた風呂敷包みに大量の薬物が入っていたことはもうわかっているんだ!」

 

 営利目的の薬物所持は無期懲役。一生娑婆《シャバ》には戻れない。ならば此処《ここ》で死んでも同じだ。

 男は包丁を掴《つか》み、喉元に当てた。

 

「包美《つつみ》……」

 

 脳裏に浮かぶのは包帯だらけのひとりの女。

 男は包み《薬》を売った金で新しい人生を歩むつもりだった。あいつは今頃、国包《くにかね》駅で俺を待っ――。

 

「あんたぁ!」

 

 その時。

 女が駆けて来るのが見えた。

 

「あたし待ってる! 包子《肉まん》売りながら待ってるから!」

  ※包子(パオズ)=中国語で肉まん、豚まんのこと。

 

 

 

 

 男の手から包丁が落ちた。

 夕焼けが、周囲を紅《あか》く包んでいた。