2017年7月(第三十四回)のお題「渡す」で書かせて頂きました。
ジャンル:オリジナル
注意書き:なし
スペース除く300字
STORIE様版あります。
ある日、
僕は萎《しぼ》んだ風船を見つけた。
風船には小さな封筒が結び付けてあって、
つたない文字の手紙と花の種が入っていた。
きっとこの国の子供が飛ばしたのだろう。
これも旅のいい思い出。
僕はその手紙と種を持ち帰った。
帰ってから種を植えた。
手紙を翻訳すると
「世界が花でいっぱいになりますように」
と書いてあった。
だから、僕も
お返しに花の種を飛ばそうと思った。
その子に直接渡すことはできないけれど、
その子の世界を彩る花のひとつが
僕の種から咲いた花だなんて、
とても素敵なことじゃないか。
数ヵ月後。
持ち帰った種は赤い花を咲かせた。
そして僕が飛ばした種も、無事に花を咲かせたらしい。
その日、
地球は謎の宇宙植物に覆い尽くされた。