【2016/05】お題:匂い


 

twitter300字ss様、2016年5月のお題『匂い』で書かせて頂いたものです。

ジャンル:オリジナル

注意書き:ややBL風味

スペース・改行除く299字

    

【optatio】

  

 

 匂いと言うのは実に奥が深い。

 

 例えば、煙草。

 きみが喫煙者でなければ、

不快だと判断するのではないのかい?

 

 だがもし恋人が喫煙者なら。

 街で同じ匂いを嗅いだだけで幸福な気持ちを覚えるだろう。

 

 もし家族に喫煙者がいたら。

 その匂いを懐かしく思うかもしれない。

 

 

 

 君はそれだけ言うと目を伏せた。

 白磁の肌と黒曜石の瞳と硝子の声を持つ君に、

匂いは似合わない。

 

 

 

 僕はポケットから煙草を取り出した。

 ぷかり、と白い煙が

ドーナツ型に消えるのをひとしきり眺める。

 

「思って、みたいの?」

 

 意地悪な質問だっただろうか。

ちらりと僕を見た君が拗ねたように目をそらす。

 

 

 

 ふふ。

 どの人間よりも精巧に優秀に、と作られた君が、

そんなことを思っているなんて。

 

 


 

ジャンル:オリジナル

スペース・改行除く300字 

 

【companion】

 

 

「ガスって本当は無臭なんだよ」

 

 まず最初はクロワッサンのサンドイッチ。

 皮がパリパリで、ちょっと大ぶり。

挟んであるのはレタス。

それとハムとチーズ。

 いいねぇ。素材の味が活きてますって感じで。

 

 

 

「だけど無臭だと漏れた時にわかんないだろ?」

 

 次はピロシキ。

 中にひき肉の餡が入ってる。

やっぱ育ちざかりには肉でしょ。

 

 

 

「で、わざわざ付けてあるんだ。臭い」

 

 次は、と伸ばした手をぴしゃりと叩かれる。

 

 

 

「それと俺の昼飯を横取りするのと、どう関係あるんだ」

「だからさ、いい匂いには逆に引き寄せられるって言うか、」

 

 そいつはあんパンをくわえたまま溜息をつく。

 

 

 

「今度からお前の匂いがしたら逃げる」

「うわ、ガス扱い?」

「ガスよりたち悪い」