【2019/06】お題:水


 

twitter300字ss様、2019年6月のお題『水』で書かせて頂きました。

ジャンル:オリジナル

注意書き:特になし

 

スペース・改行・ルビを除く300字。

 

【水のある星】

 

 

神隠しが相次《あいつ》いでいる。

何処《どこ》ぞの村で、町で。名も知らぬ国で。

TVは連日のように騒ぎ立てたが、いずれ報道されなくなるのはこの事件に限ったことではない。何時《いつ》しか話題は異常気象にすり替わっている。

 

5月にして30℃越えの今年は猛暑になるらしい。

雨は降らず、草木は枯れ、池は干上がり。

「我々はどうしたら」とTVの中でオッサンが呻《うめ》いている。

 

 

「どうもしなくたっていいさ」

 

 彼はそんなTVを見て嗤《わら》う。

 白血球が菌を殺すように、発汗して体温を下げるように、地球にも回復機能があるから問題ないと言うのだ。

 

 

 

 

 

 神隠しは続いていた。

 いや神隠しなどではなかった。

 

 今日も何処《どこ》かで人が姿を消していく。

 その内に溜め込んだ60%の水分を残して。