【2020/03】お題:余り


 

2020年3月のお題「余り」で書かせて頂きました。

スペース・改行・ルビを除く300字。

ジャンル:オリジナル

注意書き:幸福なんだか不幸なんだか

 

 

【最後の晩餐】



「見て! 松阪牛食べ放題!」

 彼女は棚に並んだ食品に目を輝かせる。

「生肉はやめよう? 冷蔵切れてるし」
「お腹《なか》壊す前に死んでるって!」


 世界はゾンビに占拠された。人々はゾンビと化し、TVは黙り込み、ライフラインが止まったところまでは鉄板《セオリー》どおり。
 襲われ損《そこ》ねた者としては奴《やつ》らを倒す薬を取りに研究所に行くか、唯一無事な町を目指すべきなのだろうけれど……これ以上は進めそうにない。


「焼けたよー」

 窓の外に青黒い人影が集まってくる。
 それ横目に肉を焼き、酒を呷《あお》り、菓子を貪《むさぼ》る贅沢。

「余り物は余り者が食《しょく》さないとね」
「誰が上手《うま》いこと言えと」


 人間として最後の日を、こうしてきみと笑って終わる。
 これって『福がある』ってことなのかな?