【2017/09】お題:雲


 

2017年9月(第三十六回)のお題「雲」で書かせて頂きました。

 

ジャンル:オリジナル

注意書き:やや鬱展開かも

スペース、改行を除く300文字。

 

STORIE様版あります。

 

【幸せの綿飴】

「うちの綿飴は雲なんだよ」

 

 色とりどりの綿飴が所狭しと並んでいる。

 

は夏空の、は遊ぶ子供たちの上に浮かんでいたのさ」

 

 おじさんは瓶をひとつ取った。

 薄桃色が香る。

 

「これは少女の初恋の味」

 

 勧められるまま口に入れる。

 甘い、どこにでもある綿飴の味だ。

 

「それはお嬢さんが幸せだから」

 

 おじさんは笑う。

 

「もう行かなけりゃ」

 

 

 

 おじさんが向かった北の国は紛争中。

 幸せの綿飴は人々の心を癒せたのだろうか。なんて、

雲を見上げて思う。

 

 

 

 

 何年か過ぎ。

 おじさんが戻ってきた。

 

「北の人は喜んでくれた?」

「もちろん」

 

 店にはい瓶が並ぶ。

 

「これは怨みと悲しみが詰まった雲さ」

 

 おじさんは笑う。

 

 

 

 

 

「他人の不幸は蜜の味。この町1番の売れ筋なんだ」