ミドリちゃん。


 

壊れかけ/お題bot(@odaidai_bot )様より

『【文題】信号待ちをしているだけの内容で400字以上』

スペース無視1267文字。

 

現代パラレル。

と言うか、これは別にキャラ指定しなくても読めるかもしれません。例の2人で書いてはいますが。

 

 

 

緑なのに

 

青信号と呼ぶは如何に。

 

 

 

 

 道路の向こう側に立つ信号機は色を灯している。

 の両脇に並んだ目盛りがポツリ、ポツリ、と減っていく。

 

 あれが全部消えたらになる。

 と言ってもLEDだとにしか見えないのだけれど、何故か昔から信号とは言わない。

 昔から、と言えば物心ついた頃にはもうだった。

 何十年も経つのに未だにちゃんと名前を呼んでもらえないのかあの色は。そう考えると、心も何もないはずの信号がやけに不憫に思えてくる。

 

 

 それじゃあ、私だけでもと呼ぼう。

 みどりミドリちゃん。

 うん、女の子の名前のようで可愛らしいじゃないか。

 

 

 本当は自分もよりはのほうが好きなんだが。

 いや、これは浮気と言うわけではなく。

 何故ならあれはただの信号機。それにあの信号機だけを特別扱いするわけではなく、全国の……もとい色の信号をそう呼ぼうと言うのだから。

 

 

 

 浮気、と言えば、こんな話を思い出した。

 私は元来、犬のほうが好きだが、最近は子猫も可愛いと思う。特にあの気まぐれさはとある人を彷彿とさせるせいか、知らず、顔がニヤついているらしい。

 

 その時に言われた。浮気だね、と。

 私は同じように信号待ちをしている隣を横目で窺う。

 

 カルボナーラとナポリタンのどっちにしようか迷っていて、結局そのどちらでもない温玉ドリアにした時もそうだった。

 感情を持っている犬猫ならともかく、カルボナーラや温玉ドリアに対しても浮気が成立してしまうとは。

 どうやら浮気というのは恋愛感情を抜きにしても、成立するものであるらしい。

 

 

 と言うことは信号相手でも。

 違う。

 もとはと言えば、ただ単に私はが好きだがに見えるものはと呼ぼう、と、それだけだったはず。

 決してよりが好きになったわけではない。

 決して!!

 

 

「私は温玉ドリアよりもあなたのほうが好きなんですからね!!」

「は!?」

 

 隣の肩を掴んで思いの丈をぶちまける。

 よし! これでいい。私は浮気などしていない。

 

 

 

 信号が変わった。

 ミドリちゃんの名前に相応しい爽やかな色だ。

 彼女(?)なら、出勤前の足取りが重く淀んでいるような朝でも清々しい気分にさせてくれることだろう。

 

 

 

 

 

 ――待て。

 

 

 

 ミドリちゃんなのにはそのままでいいのか? 

 信号というのはで一対。

 だけ愛でてを放置すると言うのは、白魚のような手は触ってもいいけど足のほうはお預け、というのと同じことじゃないのか?

 

 

 駄目だ。

 どちらかと言えば常日頃から外に出ている手よりも、服に隠されている足のほうが見たい。できることなら触りたい。

 この人はなかなかそっち方面に頭が行ってくれないから、雰囲気作りが結構大変で……これ以上は昼日中から想像する話題じゃないな。何を考えていたんだっけ。

 ああ、そうだ

。信号。信号の

 ミドリちゃんみたいにも可愛らしく呼べばいい。

 簡単なことじゃないか、何故あんないかがわしい想像に至ってしまったのだろう。

 

 

 なら……。

 

 

 

ちゃん、か。いいな」

「え!?」

 

 素っ頓狂な声に振り返ると、隣で同じように信号待ちをしていたあの人が、私を見上げたまま引きつった表情を浮かべている。

 

 

 

 

 

 あれ? 私、なにか変なこと言いました?