ヤマト。


 

「魔王様には蒼いリボンをつけて」ホワイトデー番外編2016。

 弱BL・コメディ風味。 

 例によって文頭をつなげると「ホワイトデー」になるという無理仕様つき。

 

 ……いや今ね、TVでアレを再放送しているせいで……ごにょごにょ。

 

 

 

 

呼、先人の知恵。

 

 

 

 

 ワイトデー。

 言わずもがな、バレンタインの返礼に当たる日だ。

 営利目的の企業が生み出したなどの説があるが、世の女性たちには朗報だろう。相手がシャイな男性だったら、こんな日でもなければ一生かかったって返事は返ってこない。

 まぁ中には貰い逃げをする男もいれば、お返しを期待していない女もいるし、そもそもそんなものに縁すらない男女もいないわけではないけれども。

 

 

 たがしのような雲がふわふわと浮かんでいる。

 ホワイトデーのお返しは、クッキーかマシュマロ、ハンカチ、花束など、バレンタインに比べれば多岐にわたる。

 去年はチョコレートを食べさせられたお返しにクッキーを焼いたが、今年はチョコを渡すほうをやってみた。お返しは期待してもいいのだろうか。

 

2

 や、あの人の場合、お返しなど期待するほうが間違っているのかもしれない。

 うといし、鈍いし、万が一憶えていたってわざと忘れたふりをしてくるだろうし。

 期待なんかしたら、明日からショックで立ち直れない。

 

 そうだ。

 だったら、ホワイトデーのほうも自分が用意したほうが傷は浅くて済むじゃないか。

 なんせ世間一般では「男性」から贈る日。どちらも男だろう、というツッコミはさておき、見た目だけなら絶対向こうが女性役。

 ……そんなことを思ってると知られたら最後、ボコボコにされるだろうけど。

 

 

 りあえず、厨房を借りてなにか作ろう。

 去年だって甘いものが苦手だと言いながら食べてくれたわけだし、全く脈がないわけではない。

 

 いや、きっとある。

 釣り糸みたいに細くても10本、100本、いや1万本合わせれば綱くらいの太さになる。

 言うじゃないか、『塵も積もればヤマトになる』って。吹けば飛ぶようなものから巨大戦艦を作った先人に比べれば造作もないことだ。

 

 

 で……。

 

「これはなに?」

 テーブルからはみ出す大きさのそれに、その人は困惑の色を浮かべた。

「ヤマトですが」

 クッキーを組み上げて作った戦艦模型。溶かしたチョコを接着剤にして家をつくるのはよくあるけれど、こういうのは見たことないでしょう? 細部まで忠実に再現したこのモデル、我ながら才能に惚れ惚れする出来だと思うのですがっっ!

 

「……ああ……うん。い、一緒に食べようか」

「それではお茶を淹れてきますね」

 いきなり一緒にお茶を飲む仲にまで進展した。さすがヤマト。さすが先人の知恵。

 

 

 

『――陥落するまで、あと365日。』

 

 私の頭の中で、宇宙空間をバックにそんなテロップが流れたのは言うまでもない。