「高ぇ階段だな。どこまで続いてんだ?」
俺の目の前には階段がある。
ぐるぐるとカタツムリの殻みたいに回りながら上に行く、
いわゆる 「螺旋階段」 というやつだ。
上のほうは薄暗く、何処まで続いているかは
俺が立っているここからでは見ることができない。
「ちょっくら上ってみっか?」
冗談交じりにそんなことを呟くと
背後から
「駄目よ。先に応接間に行かないと」
という声が聞こえた。
「……杏子」
そこに立っていたのは
幼馴染みの小鳥遊杏子(たかなし あんず)。
幼馴染だ。彼女ではない。
……たぶん。
杏子は眉を寄せて俺の袖を引っ張った。
「みんな待ってるわ。きっと」
「はいはい」
「上がんねーよ」
そう言おうとして
「……」
口が止まった。
なんだろう。
こんなやりとりを前にもしたような気がする――。