【1】螺旋の城 ‐1


 

「高ぇ階段だな。どこまで続いてんだ?」


 

 

俺の目の前には階段がある。

ぐるぐるとカタツムリの殻みたいに回りながら上に行く、

 

いわゆる 「螺旋階段」 というやつだ。

 

上のほうは薄暗く、何処まで続いているかは

俺が立っているここからでは見ることができない。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっくら上ってみっか?」


 

冗談交じりにそんなことを呟くと 

背後から

  

 

「駄目よ。先に応接間に行かないと」

 


 

という声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……杏子」


 

そこに立っていたのは

幼馴染みの小鳥遊杏子(たかなし あんず)。

幼馴染だ。彼女ではない。

 

……たぶん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

杏子は眉を寄せて俺の袖を引っ張った。

 

 

「みんな待ってるわ。きっと」

 


 

「はいはい」


 

「上がんねーよ」 

そう言おうとして

 

 

「……」


 

口が止まった。

 

 

なんだろう。

こんなやりとりを前にもしたような気がする――。